数多くの生産地があるコーヒー豆。その日の気分でさまざまな産地のコーヒーを味わえるのは嬉しいですよね。
これらのコーヒー生産国には共通するものがある、ということをご存じでしょうか?
「良質なコーヒー豆を栽培する地域に共通すること」と考えれば、ヒントになるかもしれませんね。
答えは「コーヒーベルト」です。
コーヒーベルトは、質の良いコーヒーノキを育てるための好条件が揃ったエリアのこと。
今回はそんなコーヒーベルトの特徴や地域と、コーヒーベルトに属する生産国についてご紹介します。
この記事を書いた人
フリーライター
かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。
コーヒーベルトとは?
赤道を挟んで南北25度がコーヒーベルトと呼ばれる地帯
地球上でコーヒー栽培に理想的な地域は特定されています。
その中心地は赤道直下の熱帯地域。この赤道を挟んだ北緯25度線と南緯25度線の間が、コーヒー栽培に理想的な地域であり、「コーヒーベルト」と呼ばれる地帯です。
コーヒーベルト地帯は、細い帯状になって地球を横断。
この様子がベルトのような形をしていることから、「コーヒーベルト」と名付けられるようになりました。
数多くの良質なコーヒー豆を産出する国々は、このコーヒーベルトに位置しているのです。
日本でコーヒーベルト地帯に属する地域は東京と沖縄
赤道を挟んだ北緯25度線から南緯25度線のエリアであれば、日本もその一帯に位置しているのではないかと思いますよね。
そのとおりで日本の緯度はおよそ北緯20度から46度。南北25度の間に位置するエリアが存在します。
沖縄の石垣島と宮古島が北緯24~25度、東京の小笠原諸島が北緯20度~27度なので、これらの地域はコーヒーベルト地帯の中に入っているのです。
日本に大規模なコーヒー栽培が根付かない4つの理由
コーヒーベルト地帯に位置する地域があるものの、なぜ日本は世界中の生産国のように、大規模なコーヒー産地に名を連ねていないのでしょうか?
実はコーヒーベルトに属しているからと言って、一大コーヒー産業に発展するとは限らないのです。
それにはコーヒー栽培をするにあたり、いくつもの適性が関わってきます。
日本でコーヒー栽培が盛んに行われない理由は、4つ挙げられます。
1. 季節
日本には一年を通して春・夏・秋・冬と移り行く四季があります。
日本の風光明媚を作り出す大事な四季ですが、コーヒー産地としては適していないのです。
むしろ、乾季と雨季がはっきり分かれている環境が適地とされています。
2. 台風
日本には1年に数回台風が来襲します。この気象災害はコーヒー栽培のみならず、あらゆる農作物にダメージをもたらします。
3. 昼夜の寒暖差が激しい
気温の寒暖差が大きすぎると良質なコーヒー豆を作り出せません。
4. 冷害
日本では安定した気温を保つのが難しく、日照時間が短かったり、低温が続いたりすることがあります。
このような冷害で被害を受けるケースも少なくありません。
このように、日本ではコーヒーノキを育てるのに適した環境を得ることが難しいことから、コーヒー栽培が定着しなかったのです。
コーヒーベルトにあるコーヒーを育てるのに適した5つの条件
コーヒーノキはとてもデリケート。大切に育てなければ生育に悪影響が出てしまいます。
それには栽培環境がとても大事で、条件が整うことで上質なコーヒー豆が出来上がります。
難易度の高いコーヒー栽培ですが、コーヒーベルトには優良なコーヒー産地が集まっています。
それは偶然が成し得たものではなく、しっかりとした理由があるのです。
豊富な降雨量
良質なコーヒーは、豊富な降雨量の中で育てられます。それも雨季と乾季がはっきりと分かれていることが必須条件。
というのも、コーヒーノキの成長期には十分な水分を与えなければなりません。
そのため雨の多い雨季の時期が必要なのです。そしてコーヒー豆の収穫期には、乾燥している乾季が最適な時期となります。
ただし降雨量は、雨季と乾季で多すぎても少なすぎても良いというわけではありません。
品種によっても必要とされる降水量が異なり、アラビカ種では年間降水量が1,400~2,000mm、カネフォラ種は2,000~2,500mm程度が生育に必要な量になります。
適度な日当たり
良質なコーヒー豆を生産するためには、十分な日照量と適度な日陰を作ることが必要です。そもそもコーヒーノキは日光に当たるのが大好き。
それでも長い時間直射日光にさらされると、紫外線の影響でコーヒー豆に栄養が行き届きません。
コーヒーノキはどんどんストレスとダメージを受けてしまいます。その結果収穫量が減少してしまうのです。
コーヒーノキにとってほどよい一定の日照量が適切ということになりますね。
日照量が多すぎる地域では、シェードツリーを活用した栽培方法を採用しています。
シェードツリーはコーヒーノキの周りに植えられた日陰用の樹木のこと。シェードツリーが適度な日陰を作り、コーヒーノキを守ってくれます。
年間平均20℃の気温
コーヒーノキは寒さに弱いのが特徴です。低温の環境ではコーヒーノキが枯れやすくなり成長に響きます。
だからといって、暑いのが好きということでもなく、年間の平均気温20℃が適温。寒くもなく暑くもないレベルですね。
良質なコーヒー豆を作るには、安定した気温がとても大切な条件になるのです。
肥沃で水はけが良く少し酸性の土壌
コーヒーノキがどのように生育していくのかは、土壌にも影響されます。
有機物やミネラルが豊富な栄養たっぷりでバランスの良い土壌をコーヒーノキは好みます。
そして水はけが良いと根腐れしにくくなり、根元から元気に育つのです。
なかでもアラビカ種の場合、弱酸性で火山灰土質の土壌が適していると言われています。
そのほか、耕しやすさもコーヒー栽培では必須条件です。
500m~2,500mの寒暖差のある高地
コーヒーベルトは赤道付近に位置しています。本来熱帯地域に該当しますが、コーヒーノキが栽培されるのは高地。
標高は500m~2,500mがベストです。これは昼間と夜間の寒暖差が大きくなることが、栽培においてプラスに働くのです。
年間の平均気温は一定であるものの、一日の大きな寒暖差がコーヒーノキに少しだけストレスを与えます。
それによって、優れたフレーバーを持つコーヒー豆が出来上がるのです。
コーヒーベルトに属する主要なコーヒー生産国4つ
コーヒーベルトには、ブラジル、タンザニア、インドネシアなど有名なコーヒー生産国が数多く分布しています。
それぞれに特徴を持つコーヒー豆が栽培されていますが、その中でも特に注目したい4つの生産国についてご紹介しましょう。
コーヒーベルトに国土の大半が属しているブラジル
ブラジルのコーヒー生産量は世界ダントツ1位。60か国以上とも言われているコーヒー生産国がある中、コーヒー生産量は全世界の約30パーセントを占めています。
ブラジルが他国の追随を許さないほど圧倒的な優位になっている理由は、コーヒーベルト。
広大な土地を有するブラジル国土の大半が、コーヒーベルトの範囲に入っています。
そしてそのエリアはいずれも、コーヒーを育てるのに適した5つの条件(降雨量・日当たり・気温・土壌・高地)に合致しているのです。
日本へのコーヒー生豆輸入量で首位のベトナム
東南アジアのみならず世界への輸出量が多いベトナムですが、日本においても2020年1~7月期でベトナム産コーヒー生豆の輸入量が首位になりました。
その理由は品質改良です。
ベトナム産コーヒー豆は、過去に他の生産国と比べて品質が劣っているレベルとして評価さていましたが、近年は品質が改良されました。
それでいて価格の方は安定して安価であることから、日本のメーカーやコーヒー愛好家からの注目を集めるようになったのです。
日本に輸入されるベトナム産コーヒー豆はカネフォラ種(ロブスタ種)。おもにインスタントコーヒーや缶コーヒーに使用されています。
日本でも人気の高い「エメラルドマウンテン」の栽培をしているコロンビア
「エメラルドマウンテン」は、日本でも人気の高い銘柄ですよね。この産地はコロンビアです。
栽培されるコロンビア産コーヒーの中でも4パーセントにも満たない高級豆のみを使用しているため、非常にレアな銘柄になります。
コロンビアは昼夜の気温差が激しいのが特徴。さらに土壌にも恵まれており、栄養たっぷり。
コーヒー栽培に適したコロンビアの地からは、当然、美味しいコーヒー豆が作られるわけですよね。
高品質で希少性が高いコナコーヒーの生産をしているハワイ(アメリカ合衆国)
アメリカのハワイ州もコーヒーベルトの生産地域に該当しています。ハワイのコナコーヒーはとても有名ですよね。産地はハワイ島にあるコナ地域。
産地から名づけられたコーヒーですが、日本でも非常に人気の高い銘柄であることがうなずけるほど、品質は最上級レベルです。
安定した温暖な気温や豊かな土壌など、優れたコーヒー栽培環境が整っています。
これにより高品質のコーヒー豆を産出していますが、生産量が少ないため希少性の高い銘柄となります。
コーヒーベルトは世界中のコーヒー愛好家になくてはならない場所
コーヒーベルトは、コーヒー栽培に最良の場所。それでもデリケートなコーヒーノキを育てるためには、厳しい条件が整わなければなりません。
5つの条件が揃ってはじめて、世界中のコーヒー愛好家が夢中になるほどの良質なコーヒーが生み出されるのですね。
コーヒーベルトではさまざまな特徴のコーヒーが産出されます。
今回その中からご紹介した4つの生産国のコーヒーで、素敵なコーヒータイムを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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フリーライター
かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。各国カフェタイムの過ごし方はさまざま。カフェ空間が人々にもたらす癒しや活力、その奥深さに魅力を感じながら、コーヒーへの探求心はなおも続く。