みなさんはベトナムコーヒーについてご存知でしょうか?
意外にもベトナムはコーヒー生産量が世界2位なのです。
ベトナムコーヒーを知ってはいるものの、飲んだことが無い人や詳しく知らない人は多いと思います。
伝統的な方法で抽出したベトナムコーヒーは、アレンジ可能でとても魅力的なコーヒーです。
そんなベトナムコーヒーの特徴や淹れ方、コーヒー大国となった歴史やおすすめの飲み方を解説していきます。
この記事を書いた人
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。
ベトナムコーヒーとは
ベトナムコーヒーとは、ベトナムで栽培されているコーヒー豆のことです。
現地のベトナム人は、独自の焙煎方法「カフェ・フィン」と呼ばれる独自のフィルターを使用しコーヒーを抽出します。
そしてコンデンスミルクを入れて、甘くし飲むのがベトナム式コーヒーです。
他にベトナムカフェ、ベトナムカフェオレなどとも呼ばれます。
ベトナムコーヒーの味わい
酸味が少なく苦味が強い濃い豆
特徴的な抽出方法も気になりますが、まずはベトナムのコーヒー豆について解説します。
ベトナムで作られているコーヒーはほとんどがロブスタ種(カネフォラ種)です。
ロブスタ種は病虫害に強く栽培しやすいですが、風味は残念ながらアラビカ種に比べて劣ってしまいます。
アラビカ種は酸味がハッキリ感じられますが、対するロブスタ種は酸味が少なく苦味が強いのが特徴です。
コーヒー自体の味がとても濃く、砂糖もミルクも入れないブラックコーヒーでは飲みにくいです。
またアラビカ種の約2倍の量のカフェインが含まれています。
日本ではインスタントコーヒーなどに使用されていることが多く、ヨーロッパでは他種とブレンドして味に変化を付けていることが多いです。
[関連]コーヒー豆のロブスタ種(カネフォラ種)とは?特徴や飲み方について徹底解説
苦味を甘味に変えるコンデンスミルク
ベトナム国民はコーヒーに砂糖よりも甘味が強い、コンデンスミルク(練乳)を入れることで苦味を甘くして飲めるようにしています。
カップの底にはコーヒーよりも重量が重いコンデンスミルクがあり、上にベトナムコーヒーが入っていることが多いです。
飲む時にしっかり混ぜないと前半は苦く、後半が甘いコーヒーになってしまいます。そのため自分好みのバランスを見ながら混ぜて飲みますよ。
新鮮なミルクの代わりに手に入れやすい練乳をいれるようになった
ベトナムでコンデンスミルクを入れる理由は、ベトナムがフランスの殖民地だった19世紀当時にさかのぼります。
かつては苦味が強いロブスタ種のコーヒーを飲みやすくするため、ミルクを加えてフランスで馴染みのあるカフェラテを取り入れようとしました。
しかし暖かい気候のベトナムでは、新鮮なミルクを手に入れるのは困難だったのです。
そのためミルクの代わりに、常温で保存ができるコンデンスミルクを入れて飲む方法が習慣になったのです。
それが現在でも受け継がれている、ということなのです。
▼ベトナムコーヒーの味わい
ベトナムのコーヒー豆の特徴
ベトナムで生産されているのはそのロブスタ種のコーヒー豆について、分かりやすく解説していきます。
コーヒー輸出量世界No.2を誇るベトナム
コーヒーの輸出量世界1位の国がブラジルですが、それに次ぐ国が実はベトナムなのです。
ベトナム産のコーヒー豆は、ほとんどがロブスタ種です。ロブスタ種だけでみると、輸出量世界第1位になっています。
日本ではインスタントコーヒーなどに使用されているロブスタ種。
しかしカフェや一般的なレギュラーコーヒーには、アラビカ種が使用されているため、日本では馴染みが少ないのです。
アラビカ種もベトナムで生産されていますが、ダラットなどの一部地域では全体の1%ほどと極めて少ない量です。
コーヒー栽培に最適なコーヒーベルトに属していたベトナム
ベトナムは北緯12度に位置しており、コーヒーベルトと呼ばれるコーヒー栽培に適した地域に含まれています。
また標高が比較的低く、平均気温が25~27度前後の高温多湿な環境が特徴です。
フランスから持ち込まれたロブスタ種はベトナムのような低地でも栽培しやすく、さび病にも強いのでベトナムの気候に適しているのです。
そのためアラビカ種ではなくロブスタ種が採用されました。
アラビカ種は低地や高温多湿な環境では育ちにくい反面、ロブスタ種はその条件にも対応するのがメリットです。
コーヒー生産に約260万人携わっている
フランスから独立したベトナムでは、ドイモイ政策が行われました。(ドイモイ政策については後ほど解説します。)
その影響もあってベトナム国民はあらゆる物事の制限が無くなり、ベトナム人は自分たちのためにコーヒー生産を行うようになりました。
また生産は50ha未満の中小規模の農園で栽培されており、ナチュラルと言われる精製方法を行っています。
現在では約260万人もの国民がコーヒー産業に携わり、そして輸出量世界2位まで成長したのです。
収穫時期が長くチョコレートのような甘い香り
コーヒーにも旬があり、国によって収穫時期や期間が異なります。ベトナムコーヒーの収穫時期は10月から翌年の4月頃までです。
他の国では収穫期間が3、4ヶ月だけの国もあるので、それと比べると1年の半分が収穫時期であるベトナムコーヒーは少し長いですね。
またロブスタ種は酸味が極めて少なく、チョコレートのような香ばしい香りが強いのが印象的です。
そのためチョコレートはもちろんキャラメルなどとの相性も良く、ベトナムのロブスタ種はフレーバーコーヒーにも使用されることが多いです。
ジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)やコン・サク・コーヒーなどがある
とても希少性が高く価値の高いコーヒーとして知られている「コピ・ルアク」。
これはジャコウネコがコーヒーの実を食べて排出した糞から取ったコーヒーのことです。
世界的に有名なのはインドネシアですが、ベトナムでも生産されています。
ジャコウネコは完熟した美味しいコーヒーの実だけを選んで食べます。果肉などは消化されますが、実の方は消化されません。
消化液と混ざって発酵が進んだコーヒー豆は、とても良い香りがして美味しいのです。
また、コピ・ルアクと似たもので「コン・サク・コーヒー」と呼ばれるものがあります。商品パッケージはリスが描かれていますが、イタチの糞から取ったコーヒーです。
こちらも普通のコーヒーにはない独特な香りや香ばしさを感じることができます。
バターや魚醤(ぎょしょう)を混ぜてする焙煎
これもまた変わったベトナムのコーヒー文化のひとつですが、焙煎後のコーヒー豆にバターや魚醤で煎るコーヒーも存在します。
ロブスタ種は本来苦味が非常に強く、酸味や風味が弱い特徴があります。
バターや魚醤を加えることで甘味やコクを出してまろやかにし、テイストを調整して飲みやすくしているということです。
そのままでは飲みづらいロブスタ種のコーヒーですが、現地の人の知恵と工夫によって美味しく飲めるようになっているのです。
ベトナムコーヒーの等級
グレード1 |
スクリーンサイズ16~14で、欠点豆が5%以下 |
グレード2 |
スクリーンサイズ14~12で、欠点豆が10%以下 |
グレード3 |
スクリーンサイズ12~10で、欠点豆が20%以下 |
ベトナムで栽培されたロブスタ種は、スクリーンサイズと呼ばれているコーヒー豆の大きさと欠点豆の数によって格付けが行われています。
グレード1が最も等級が高く、豆の大きさが14~16で、欠点豆が5%以下に収まっているのが条件です。
グレードの違いはコーヒーの味に大きく響くので、格付けの審査はとても重要なのです。
[関連]コーヒー豆の等級(グレード)を生産国別に詳しく解説!
ベトナムコーヒーの歴史
フランスがベトナムを占領してコーヒー栽培が本格化
最初にベトナムにコーヒーが持ち込まれたのは、17世紀から18世紀頃です。
ポルトガルやスペイン、オランダなどの宣教師が宣教師布教で持ち込んだのが始まりとされていますが、それは小規模な栽培に過ぎませんでした。
しかし19世紀頃フランスがベトナムを占領。ロブスタ種のコーヒーノキをベトナムに持ち込み、コーヒー生産が拡大しました。
こうして本格化されたコーヒー栽培は、当時はフランス人の為のコーヒー栽培でした。
ベトナムがコーヒー大国となった2つの理由
ドイモイ政策で生産量がアップ
1990年代に入りフランスから独立したベトナムでは、これまでの社会主義経済を自由主義に方向転換しドイモイ政策が開始されました。
以前は国民の食料は配給制で、指定された日程や場所に行って並ばないと食料をもらえなかったのです。
しかしドイモイ政策の一端として土地の私有化や譲渡が認められ、新規の農地開発が可能になりました。
これにより働けば働くほど収入が増え豊かになる仕組みが出来上がり、その影響で生産性が上がったのです。
そうしてコーヒーの生産量も飛躍的に増え、フランス人の為にコーヒー栽培をしていたベトナム国民でしたが、自分たちのためにコーヒー栽培を行うようになったのです。
ベトナムコーヒーを根付かせたネスレ
コーヒー生産量世界2位まで上り詰めたベトナム。ここまで成長した背景には、大手コーヒー会社のネスレの存在が大きいでしょう。
ネスレはロブスタ種の安価でありながら大量生産に向いていることや、世界的にロブスタ種の需要が充分にあることに目を付けます。
コーヒー栽培の技術支援や生産工場を支援し、コーヒーの質や収穫量をアップさせ、ベトナムコーヒーを世界に売り出すようにしました。
現在では21,000のコーヒー農園を、300人以上の指導係が指導しています。
ベトナムコーヒーのカフェ・フィン
深く濃い味わいのベトナムコーヒーは「カフェ・フィン」から生まれる
ベトナムコーヒーを美味しく楽しむためにはカフェ・フィンというコーヒー器具が必要不可欠です。
これはベトナム特有のコーヒーを抽出するフィルターで、カフェ・フィン無くしてベトナムコーヒーの美味しさや魅力を伝えることはできません。
カフェ・フィンは4つのパーツで構成されている
① 上蓋 コーヒーを抽出している時に蒸らす役割。 |
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② 中蓋 筒にいれた粉を抑えるフィルター。 |
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③ ドリッパー コーヒーの粉を入れ、その上から注がれるお湯を受ける。 |
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④ 下皿 カップの上に乗せて粉が落ちないようにする。 |
3つのパーツは穴が空いているカフェ・フィン
カフェ・フィンには4つのパーツが存在し、グラスにコーヒーが落ちていくという仕組みです。
3つである中蓋、ドリッパー、下皿には小さな穴が空いており、それぞれのフィルターを通ってコーヒーが抽出されます。
上蓋に穴は空いていませんが、お湯を注いだあとに乗せて蒸らしを行う際の大事なパーツです。
中蓋でコーヒーの濃さが調節可能
カフェ・フィンの中蓋は上から手で蓋を押し込むタイプのものと、ネジで締めるタイプのものがあります。
ネジで締めるタイプのカフェ・フィンは、中蓋を強く締めるほど濃厚なコーヒーがゆっくりと抽出されます。
また緩く締めるとあっさりとしたコーヒーが抽出され、濃度を自分でコントロールすることができます。
強く中蓋を締めると抽出されるのに10分前後かかることもあるので気長に待ちましょう。
その分しっかりと圧力がかかって濃厚なコーヒーを楽しむことができますよ。
カフェ・フィンを使う時にはコーヒー粉の大きさに注意する
カフェ・フィンでは使用するコーヒー粉の大きさに注意しましょう。
コーヒー粉の粒度が細かすぎると、フィルターの穴からコーヒーが通り抜けて出てしまうことがあります。
カフェ・フィンでコーヒーを抽出するなら、中挽きであっても充分濃厚なコーヒーが出来上がりますよ。
中挽きよりも細かい粉を使用しないよう注意しましょう。
ベトナムコーヒーの美味しい淹れ方と飲み方
美味しいベトナムコーヒーの淹れ方手順
現地でカフェ・ダー呼ばれるコーヒー豆本来の味が分かるブラックベトナムコーヒー
まず別のカップに氷をたくさん用意しておきます。
コーヒーが抽出できたら氷の入ったカップに移し、よく混ぜて氷が溶けたら完成です。
コーヒー豆本来の味がダイレクトに感じることができる冷たいブラックベトナムコーヒーです。
そこに牛乳を加えればいつもと少し変わったアイスカフェオレになります。
簡単にでき、かつ美味しいコーヒーとなりますよ。
酸味が心地良くてベトナムで愛されているヨーグルトコーヒー
続いて紹介するヨーグルトコーヒーはベトナムで10年ほど前に誕生し、現在も親しまれているアレンジコーヒーです。
まずはコーヒーをカフェ・フィンで抽出し、カフェ・ダーを作ります。
その後グラスにヨーグルトとコンデンスミルクを入れて、ダマが無くなるまでよくかき混ぜましょう。
最後に氷とカフェ・ダーを入れて完成です。
ヨーグルトとコーヒーの割合は2:1にすると、ヨーグルトの酸味とコーヒーの苦味のバランスが良いのでおすすめです。
まとめ
今回はベトナムコーヒーについて解説しました。
さまざまな歴史を乗り越えて生まれたベトナムコーヒーは、あまり聞き慣れないコーヒーかもしれません。
しかしとても美味しいコーヒーですので、ぜひ試してみて欲しいです。
ベトナムコーヒーを飲む時は、カフェ・フィンで抽出したままでは飲みづらいです。
しかしベトナム風に、コンデンスミルクと合わせて飲むことで苦味と甘味が絡んだとても美味しいコーヒーに仕上がりますよ。
魅力を知ればハマる人も多いのでぜひ飲んでみてください!
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この記事を書いた人
小野 青
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。