今回はコスタリカコーヒーの特徴や美味しい飲み方などを解説します。
コスタリカのコーヒーは品質が良いのでとても注目されています。
それもそのはず。コスタリカではコーヒーの法律が存在するほど、国が徹底して管理・サポートをしているのです。
コスタリカコーヒーは全体的に味のバランスがいいですが、栽培される地域によって味が変わってくるのも特徴です。
コスタリカのことを知って、さらにコスタリカコーヒーを美味しく飲んでみませんか?
この記事を書いた人
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。
コスタリカコーヒーとは
コスタリカはスペイン語で「豊かな海岸」という意味を持ち、カリブ海と太平洋の海岸線を有している中央アメリカの国です。
面積が51,000㎢と日本の北海道の半分以下という小さな国ですが、海や火山などの自然が豊かで4分の1がジャングルという熱帯雨林が広がる土地となっています。
また様々な動植物が生息しており、地球上全ての生物種のうち5%が生息すると言われるほど。そのため、「環境保護先進国」としても有名です。
もちろん農産物もたくさん栽培されており、主にバナナやパイナップルなどがあります。
コーヒー栽培もそれらに並ぶ重要な輸出品です。
標高2,000mを超える山岳地帯がコーヒー栽培に最適
コスタリカはコーヒーの栽培に適した理想的な環境だと言えます。
国土を横断する火山帯によって作られた標高差のある地形が作られ、国土の75%が標高1,000~1,700mのところで栽培されています。
また標高2,000mを超える山岳地帯も存在し、雨季と乾季があるのも特徴です。
一般的に標高が高いほど日中は気温が高くなり、夜から夜明けにかけては気温が低くなります。
この日中と夜の気温差が大きいとコーヒーの実の成熟スピードが緩やかにさせて、味が引き締まった美味しいコーヒーができやすくなるのです。
主要な生産地は7つ
タラスはコスタリカのコーヒー生産地の中でも特に標高が高く、雨季と乾季がはっきりしています。
セントラルバレーは都市部にあり、肥沃な火山灰土壌が特徴的です。
ウェストバレーもまた肥沃な土壌環境と寒冷な土地で栽培されています。
トゥリアルバは豊富な降水量や気候などの影響で成熟が早いのが特徴であり、トレスリオスは太平洋岸の斜面に位置し、コーヒー産地としては小規模です。
またブルンカは標高が高くて湿気が多く、主に中小規模でコーヒー栽培が行われており、オロシのコーヒー栽培は100年以上続いており、地域の経済活性化を支えてきました。
コスタリカコーヒーの特徴と味
ハニープロセス製法で甘くフルーティーに
ハニープロセス |
ミューシレージ除去率 |
ブラックハニー |
なし |
レッドハニー |
20~25% |
イエローハニー |
50% |
ゴールデンハニー |
75~80% |
ホワイトハニー |
90% |
コスタリカのコーヒー豆は、「パルプドナチュラル(セミウォッシュド)」と呼ばれる方法で精製され、「ハニープロセス」とも呼ばれます。
これは水洗いする「ウォッシュド」とそのまま天日干しする「ナチュラル」との間にあり、その違いはミューシレージ(粘液質)を取り除く工程です。
ウォッシュドは果肉やミューシレージを取り除いて乾燥させますが、ナチュラル収穫したらそのまま天日干しして乾燥。
ハニープロセスではある程度果肉やミューシレージをあえて残して乾燥させます。
このミューシレージを残す量によって名称も変わり、ホワイトハニーに近づくほど精製するのが難しいとされているのです。
濃厚な果実のような甘みと酸味が特徴的
ハニープロセス製法で精製したコーヒー豆は、ミューシレージの糖分が凝縮されているので果実由来の甘さやコクが強く感じられ、余韻が長く、ハチミツのような質感を得ることができます。
またミューシレージ除去率が変わると共に味も大きく変わってきます。
コスタリカのコーヒー豆を購入する際、「~ハニー」と記載があればぜひ注目してみてください。
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7つの地域ごとに違った味わいが楽しめる
地域 |
味わい |
タラス |
チョコレート風味の味わい |
トレスリオス |
酸味と香りがとても強い |
セントラルバレー |
カカオのような甘みと香り |
ウェストバレー |
ピーチや杏のような果実感 |
オロシ |
まろやかな口当たりとフローラルフレーバー |
ブルンカ |
酸味と苦味と香りのバランスが良い |
トゥリアルバ |
大粒で香り豊かな味わい |
地域によりそれぞれ味わいが違い、タラスは香り高くチョコレートのような風味を、トレスリオスのコーヒーも香りが強いですが、タラスとは違い酸味を強く感じられます。
セントラルバレーは苦味と酸味のバランスがよく、カカオのような甘味が。
ウェストバレーは柑橘系よりも、ピーチや杏のような果実感を感じられます。
このように様々な味、風味を楽しめるのもコスタリカコーヒーの魅力です。
▼コスタリカコーヒーの味わい
コスタリカコーヒーの等級
等級はコーヒー豆の大きさや欠点豆の混入率によって区別される国もありますが、コスタリカコーヒーの場合は生産地の標高の高さと太平洋側斜面か大西洋側斜面によって区別されています。
太平洋側と大西洋側で標高の高さが大きく変わるからです。
先ほども説明しましたが、標高が高ければ高いほど成熟スピードが緩やかになり、コーヒーの味の質が良くなるとされています。
またコスタリカのコーヒー豆はほとんどが手作業で栽培や収穫がされていたり、管理がしっかりしています。
欠点豆の混入率が初めから低いので等級を区別する際の基準にはならなかったと想定されます。
コスタリカ太平洋側の等級
等級 |
標高 |
ストリクトリー・ハード・ビーン(SHB) |
1,200m~1,650m |
グッド・ハード・ビーン(GHB) |
1,000m~1,200m |
ハード・ビーン(HB) |
800m~1,000m |
太平洋側の山岳地帯は大西洋側に比べて全体的に標高が高いので、条件も標高が高めに設定されています。
一番高い等級はストリクトリー・ハード・ビーン(SHB)で標高が1,200~1,650mのコーヒー豆です。
中でも標高が1,550m以上のものを最高級としています。そこから200m下がっていくごとにグッド・ハード・ビーン(GHB)、ハード・ビーン(HB)と等級も下がります。
コスタリカ大西洋側の等級
等級 |
標高 |
ハイ・グロウン・アトランティック(HGA) |
900m~ |
ミディアム・グロウン・アトランティック(MGA) |
600m~900m |
ロウ・グロウン・アトランティック(LGA) |
150m~600m |
大西洋側の山岳地帯は標高が低いので、一番高い等級でも900mとなっています。
一番低い等級はロウ・グロウン・アトランティック(LGA)で、標高はわずか150~600mです。
太平洋と大西洋の間の等級
等級 |
標高 |
ミディアム・ハード・ビーン(MHB) |
500m~1,000m |
太平洋と大西洋の間に位置する栽培地域も存在しますが、等級の区別は無く、ミディアム・ハード・ビーン(MHB)の500~1,000mのみとなっています。
ちなみに、これらの等級に当てはまらなかったコーヒー豆は格付け評価無しとされ、国内用として消費されます。
[関連]コーヒー豆の等級(グレード)を生産国別に詳しく解説!
コスタリカコーヒーの歴史
コスタリカは長いコーヒーの歴史を持っています。
そして国や政府もコーヒー産業を支えるなど、コスタリカにとってコーヒーは大事な農産物です。
そんなコスタリカコーヒーの歴史を解説します。
中米初のコーヒー産業国がコスタリカ
1821年にスペインから独立を果たした時のコスタリカは、国土の95%が誰も手を付けていないような密林に覆われていました。
コーヒー栽培が始まったのは18世紀ごろ、キューバからコスタリカにコーヒー豆が持ち込まれたのがきっかけとされています。
そこでコスタリカがコーヒー栽培を初めたところ、適した環境であることから次第に生産量を増やしていくようになりました。
その時周辺国ではまだコーヒー栽培をしている国は無く、コスタリカは中米で初めてコーヒー産業に着手した国でもあります。
19世紀初頭には輸出できる生産量に
コスタリカには標高の高い山脈や火山があります。
また安定した日照量や降水量など、質の高いコーヒーができる条件が揃っていました。
高品質なコーヒーをたくさん生産できる環境なら、もっと生産量を増やして海外へ輸出しようと考えるのも自然な流れかもしれません。
その後も順調に国中へコーヒー産業が拡大していくと、19世紀の初頭には他国へ輸出されるまでになりました。
質の高いコーヒー栽培をすることで経済が安定する
コーヒー栽培に適した自国の環境を活かし、質の高いコーヒー豆を作ることを目指します。
機械を導入せず、人の手でコーヒー豆を育てることによって高品質で均一化されたコーヒー豆を生産するようになったのです。
輸出が本格的になると、それをきっかけに経済は安定し、現在までコスタリカの重要な農産物となっています。
ちなみに現在コスタリカの人口約500万人に対してコーヒーの木は約3億4,000万本までにのぼります。
単位面積当たりの収穫量では世界最高です。
1933年にはCICAFEが設立
コーヒー産業が発展していくと、次第に環境破壊や品質の向上・維持が難しくなるなどの問題が出てきました。
そこで政府は安定供給と品質維持を目的とした「コスタリカコーヒー協会(CICAFE)」を設立します。
この協会は主に生産者への技術的な指導や生産~輸出までの管理・指導などを行って国内のコーヒー豆の品質向上に繋げています。
また過去には、コーヒー精製場における環境汚染度を大幅に減少させることを目標に設定。
環境保護に関する取り組みも行っています。
今のコスタリカコーヒーがあるのはCICAFEのサポートがあるからこそだと言えます。
1988年にコーヒー生産に関する法律を制定
コスタリカコーヒーを語る上で最も特徴的だと言えるのが、アラビカ種以外のコーヒー生産が法律で禁止されているということです。
アラビカ種はロブスタ種と並ぶ代表的なコーヒーの品種で、ロブスタ種に比べ病気などに弱いですが、品質が良いと評価されています。
この法律は1988年にコーヒーの品質を維持するため政府が定めたもので、コーヒー豆の生産を禁止するような法律があるのは世界中でコスタリカだけです。
とても珍しいですが、それだけ自国のコーヒー栽培・品質にこだわりを持ち、他国に輸出しようというコスタリカの誠意が感じられますね。
現在コスタリカで栽培されているコーヒー豆の半分はスペシャリティーコーヒーに格付けされています。
国を挙げてのサポートや、丁寧な栽培が昔から行われてきたからこそ海外からも高く評価されているのです。
コスタリカコーヒーの美味しい淹れ方と飲み方
コスタリカコーヒーは全体的に苦味や酸味のバランスがよく、芳香な香りもあります。
そこに「ハニープロセス」製法による甘さや生産地ごとの特徴が現れ、複雑さを増しています。
では、コスタリカコーヒーをより美味しく飲むにはどんな淹れ方をすればいいのか、おすすめの方法を紹介します!
酸味と苦味のバランスが取れる中煎りがおすすめ
最初にコスタリカのコーヒー豆を購入する際は、中煎りがおすすめです。
浅煎りだと酸味が際立ち、深煎りだと苦味が際立ちます。
浅煎りと深煎りの間の中煎りを選ぶことで、コスタリカの持つ柑橘系の香りを消すことなく、ほどよくマイルドな口当たりになります。
苦味と酸味のバランスが最もよくコスタリカコーヒーの味わいを楽しむことができるうえ、酸味が苦手な人や苦味が苦手な人それぞれに対応できる風味になるのでおすすめです。
85℃ぐらいのお湯で淹れればより華やかに
コスタリカコーヒーの良さをさらに引き出したいのであれば、85℃ぐらいのお湯で抽出してみましょう。
少し温度が低く感じますが、高温のお湯よりもフルーティー感や華やかなフローラルフレーバーをしっかりと感じることができます。
またハニープロセス製法で精製されたコスタリカコーヒーは、ハチミツのような甘さも持ち合わせています。
お湯を低めに設定することで、柑橘系の酸味と甘さが交じり合った複雑な風味を出すことができますよ。
上品な酸味に特徴のあるコスタリカ産コーヒーをおすすめ!
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この記事を書いた人
小野 青
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。