コーヒーと言えば苦味をすぐに連想する人は多いのではないでしょうか?
それほどコーヒーに苦味はつきものであり、切っても切れない関係です。
またコーヒーの苦味の原因はカフェインだと思っている人も少なくありません。
確かにカフェインも苦味成分のひとつですが、カフェインレスコーヒーでも苦味は感じます。
ではカフェインの他にコーヒーの苦味の原因は何なのでしょうか?
今回の記事では、コーヒーの味で欠かせない苦味や、苦味が強い豆・弱い豆など詳しく解説していきたいと思います。
この記事を書いた人
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。
コーヒーの苦味とは
多くの人はコーヒー=苦いとシンプルに捉えがちですが、実はコーヒーの苦味は2種類あり、主にその2つがコーヒーに苦味をもたらしています。
ひとつはコーヒー豆の成分による苦味。もうひとつは焙煎による焦げの苦味です。
この2つの苦味はとても大きな違いがあるのでそれぞれ解説していきます。
コーヒー豆の成分による苦味
コーヒーの生豆には、カフェインやクロロゲン酸、トリゴネリンなどの成分が含まれており、これらがコーヒーに苦味をもたらしていると言われています。
ですが、もともとコーヒー豆は果実の中にある豆なので、生豆の状態では苦味を感じることはありません。
これは豆を焙煎することによって、これらの成分が化合したり分解して減少することで苦味を感じるようになるのです。
豆によって異なりますが、クロロゲン酸は浅煎り~中深煎りぐらいの段階の間にクロロゲン酸ラクトン類という苦味成分に変化します。
これは酸味や甘味と上手く調和され、良質な苦味とされているのです。
コーヒー豆の焙煎による焦げの苦味
先ほど、浅煎り~中深煎りぐらいの段階で、良質な苦味であるクロロゲン酸ラクトン類が生成されると説明しました。
そのまま焙煎し続けるとこの成分は減少していってしまい、代わりにビニルカテコール重合体に変化していきます。
またクロロゲン酸とショ糖が合わさってできる褐色色素や、アミノ酸を加熱することによって生成されるメラノイジンなどがあり、これらは焙煎が行き過ぎて「焦げる」ことで生成されます。
みなさんはトーストや魚、お肉などを誤って焦がしてしまったことはありませんか?
この「焦げ」た苦味とビニルカテコール重合体や褐色色素、メラノイジンがもたらす苦味は同じで、不快な苦味や渋みを感じてしまいます。
苦味が強いコーヒー豆
強い苦味と深いコクが特徴マンデリン
マンデリンはインドネシアのコーヒー豆です。マンデリンの最大の特徴は強い苦味と深いコクにあります。
それらを最大限に活かすためにあえて深煎りで焙煎されることが多いです。
一般的なコーヒー豆は深煎りにすると個性がかき消されてしまいますが、マンデリンは個性が消えることなく濃厚な味わいを楽しむことができます。
日本では昔から深煎りのコーヒーを飲む文化が根付いているため、マンデリンのコーヒー豆はよく好まれているのです。
マンデリンはミルクとの相性バツグン。そのためカフェオレのベースやカフェラテを作るため、エスプレッソによく使われます。
コーヒーの酸味が苦手な人におすすめで、甘いスイーツともよく合いますよ。
良質な苦味があるブラジルサントス
ブラックコーヒー初心者の人や、柔らかい苦味が好きな人におすすめなのがブラジルサントスのコーヒー。
ブラジルはコーヒー生産国が世界第一位です。
圧倒的な生産量と安定した供給が得られるため、ほとんどのコーヒー豆を海外に輸出しています。
その中でも特に有名なのがブラジルサントスという種類のコーヒー豆です。
苦味はしっかりと感じられますが、酸味とよく調和しており、コクが感じられるのが特徴。
また柔らかくも甘すぎない香りも印象的で、全体的に酸味と苦味のバランスが良いブラジルサントスは多くの人から好まれています。
野性的な苦味が特徴のベトナムロブ
コーヒーの生産国がブラジルに次いで多い国がベトナムです。
ですがほとんどのコーヒー豆がヨーロッパやアメリカに輸出されています。
日本でも缶コーヒーやインスタントコーヒーに使用されることが多く、ベトナムロブを見かけるのは少し珍しいかもしれません。
また栽培しているのは一般的に知られているアラビカという品種ではなく、主にロブスタという品種です。
このベトナムロブのコーヒー豆は、野性的な苦味と風味が特徴。
フルーティーな酸味はほとんど感じられず、香ばしい香りがします。ロブスタ種でも徹底された栽培環境であれば、完熟したチェリーの甘味も感じることができます。
苦味が弱いコーヒー豆
スッキリとした味わいのイエメン・モカ
イエメン・モカは、イエメンにある「モカ港」からコーヒー豆が多く輸出されていたため、その名が付けられました。このイエメン産モカコーヒーの「モカマタリ」とも言われます。
苦味が強くない代わりに酸味と香りは強く独特ではありますが、甘味やコクも感じることができます。
その上品さは多くの人を魅了しており、コーヒーの女王とも言われるほど。
ほとんどが酸味や香りを活かすために浅煎りで焙煎されることが多いですが、あえて深煎りで焙煎されていることもしばしば。
深煎りでは独特な酸味や香りは控え目になりますが、香ばしさが加わって浅煎りとは違った美味しさを発見することができます。
フルーティーな酸味があるタンザニア・キリマンジャロ
キリマンジャロはタンザニアの北東部にある山の名前で、そこで栽培されたコーヒー豆にもそのままキリマンジャロの名を付けています。
標高が高い山で育てられたキリマンジャロはキレがあり、フルーティーな酸味や甘味が特徴的です。
フルーツやフルーツを使ったお菓子などとよく合います。
酸味をよく味わいたいのなら浅煎りで焙煎されたキリマンジャロを選ぶと良いでしょう。甘酸っぱくスッキリとした酸味が楽しめますよ。
深煎りであれば、甘味や香ばしさが倍増し、チョコレートのような香りやコクを楽しむことができます。
南国のフルーツを感じさせる香りを持つハワイコナコーヒー
ハワイのコナコーヒーは、ハッキリとした柑橘系のフルーティーな酸味を味わうことができます。
南国のフルーツのような香りや優しい甘味、華やかな酸味はハワイだからこそ作り出せるもの。
その個性あふれる味わいと生産量の少なさから希少価値が高く、世界三大コーヒーのひとつとして名を馳せています。
コクはありますが苦味をあまり感じることはないので、コーヒーをあまり飲まない人や、苦味が苦手な人でも飲みやすいコーヒーです。
日本ではストレートのコナコーヒーはほとんど出回っていませんが、ブレンドされたものであれば気軽に手に入れることができます。
コーヒーの苦味をコントロールする5つのポイント
焙煎時間を短く
私たちはコーヒー豆に含まれている苦味成分をコントロールすることは出来ませんが、焙煎度を変えたり、好みの焙煎度のコーヒー豆を選ぶことはできます。
焙煎する人はコーヒー豆が本来持っている特性をよく理解し、それを活かすように焙煎度合いをコントロールしています。
コーヒー豆は焙煎度が浅いと苦味が抑えられ、酸味を感じやすくなります。
焙煎度が深いと焦げやすくなるため、苦味が強く酸味が抑えられたコーヒー豆に仕上がります。
他にも苦さをコントロールする方法はありますが、焙煎度が酸味や苦味に与える影響が断トツで大きいです。
もし苦味が強いコーヒーが飲みたいのであれば、浅煎りではなく中深煎り~深煎りのコーヒー豆を選ぶと良いでしょう。
[関連]コーヒーの酸味について美味しい味わい方や抑える方法などを解説します。
使用する豆を少なめにしよう
例えばいつもより抽出するお湯の量を増やしたとします。
最初はコーヒーの成分がしっかり出ますが、だんだん濃度が薄くなり、最後には全部成分が出し切っているのにお湯を注いでいる状態になり、味が薄くなります。
同じ原理で、お湯の量が一緒でも使用するコーヒー豆の量を多くすれば苦味が強まり、少なくすれば苦味を弱くすることができます。
ただ豆の量を少なくすれば苦味を抑えられると同時に味も薄くなりやすいので注意しましょう。
豆を荒く挽く
とても苦いことで知られているエスプレッソは、普通の挽き目よりも何倍も細かく、専用のミルやマシンでコーヒーを抽出しています。
このように挽き目(メッシュ)を細かくすればするほどコーヒーの苦味成分が出やすくなり、逆に荒く挽くことで苦味を抑え、あっさりとしたコーヒーが出来上がります。
少し挽き目を変えるだけで大きく味が変わります。
また挽き目が細かすぎる場合、雑味が出やすくフィルターに詰まってしまって過抽出になりやすくなるので、細かく挽き過ぎるのも避けたいところです。
湯温を下げる
皆さんは沸騰したてのお湯をそのまま注いでいることはありませんか?
お湯の温度をあまり気にしていない人が多いかもしれませんが、温度も苦味をコントロールできるひとつの方法です。
コーヒーの酸味成分は低温でも出やすいですが、苦味成分は高温でないと出にくい傾向にあります。
そのため苦味を抑えたい時は低めの温度で抽出しましょう。
ですが豆の種類によっては、低温だと酸味も出づらくなってしまうものもあります。また高温過ぎても雑味が出やすいので注意が必要です。
80~90℃ぐらいの温度なら、雑味も少なく酸味や苦味といった成分をしっかり抽出することができるのでおすすめです。
抽出時間を短めにする
抽出時間もコーヒーの苦味をコントロールすることができます。
通常コーヒー豆は酸味成分から先に抽出され、苦味成分は後から出る傾向にあるため、苦味が苦手な人は抽出時間を短くスピーディーにお湯を落とすと良いでしょう。
反対にお湯に触れる時間が長いほど雑味など不要な成分も抽出してしまいます。
お茶を作るとき、お茶の葉をそのまま入れっぱなしにしていると渋みやエグ味が出てしまうのと同じです。
コーヒーの分量関係なく、3分以内に落としきるのを目標にすれば、余分な成分が抽出されるのを抑えられます。
一度スマホなどのタイマー機能を使って時間を計測してみることで、イメージがつきやすくなりますよ。
まとめ
今回はコーヒーの苦味の原因や調整方法について解説しました。
同じ豆でも焙煎度が違えば苦味の感じ方は変化し、同じ豆、同じ焙煎度でも抽出方法によって苦味を調整することができます。
もし間違って深煎りの苦味が強いコーヒー豆を買ってしまった場合でも、苦味を抑えて飲むことは可能です。
自分好みの苦味を持っているコーヒー豆を見つけて、素敵なコーヒータイムを過ごしてください!
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この記事を書いた人
小野 青
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。