家庭で気楽に飲めるインスタントコーヒーや、様々な味わいを楽しめる喫茶店の展開で日本でもコーヒーは非常に身近な存在になりました。
中南米やアフリカ諸国など大まかなコーヒー生産国のイメージはあっても、どこでどれくらい生産されているか知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では国別生産量のランキングや、世界の消費量、日本への輸入量などをわかりやすく解説します。
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コーヒー生産量ランキングTOP10
出典:https://coffee.ajca.or.jp/
今やお茶と同じように日本中でコーヒーが愛されており、ちょっとした休憩や食後などに毎日のように楽しんでいる人も多いのではないでしょうか。
そんなコーヒーですが、日本では栽培されていないのでどこの国でどれほど生産されているのか、ざっくりとしたイメージはあってもなかなか詳細までは知らないもの。
コーヒーの産地は現在60ヶ国もの国で生産されており、ブラジルやコロンビアなどの中南米、エチオピアなどのアフリカ諸国以外に、近年ではアジアでの生産量が増加しています。
ここではコーヒー生産量1位~10位までの国をご紹介します。
No.1 国土の大半がコーヒーベルトに属しているブラジル
コロンビアやインドネシアなど、さまざまな生産国のあるコーヒーですが、やはり生産量1位はダントツのブラジルで、その生産量はなんと全体量の30パーセントを占めています。
ブラジルでは1850年からコーヒー栽培が行われており、その歴史も古く昔からコーヒー大国として有名です。
ブラジルの気候と環境はコーヒー栽培に最高に適しています。
コーヒー生産地帯に最適な赤道を挟んで南北緯約25度の一帯を「コーヒーベルト」といいます。
ブラジルは国の大半がこのコーヒーベルトに属しており、国土全体がくまなくコーヒー栽培地なのです。
また機械を通しやすい大規模な農業が多く、良質な豆を大量に生産することを可能としています。
No.2政策変化とネスレの支援により栽培が拡大したベトナム
中南米やアフリカ諸国での生産イメージのあるコーヒーですが、2位はアジアのベトナムです。
生産量はなんと16,83,971t。
3位以降の生産国をかなり引き離しての2位着地の結果なので、かなりの実績をつけている生産国だといえるでしょう。
ベトナムでは1986年、ドイモイ政策で私企業がコーヒー生産参入できるようになったことで生産量が向上しました。
また、ネスレなど世界的に有名なコーヒー企業がコーヒー栽培の技術支援や生産性向上などベトナムを支援。
おかげで今や世界最大のロブスタコーヒー豆の輸出国になるまでに成長しました。
No.3栽培に適した好条件が揃っていたコロンビア
生産量3位は中南米のコロンビアです。日本への輸入量でも、ブラジル、ベトナムに次いで3位の生産量を誇り、親しみをもって飲んでいる人も多いのではないでしょうか。
特にアラビカ種が有名で、フレッシュな酸味とコクをもった高品質な味わいが日本でも人気です。
コロンビアの特徴はなんといってもその栽培条件。
オクシデンテ山脈、セントラル山脈、オリエンテ山脈などのアンデス山脈が連なり、1,200~2,000mの高地での栽培が行われます。
また、昼と夜との寒暖差や火山生の土壌、適切な日照量など、コーヒー栽培に適した多様性のある産地が魅力となっています。
No.4ロブスタ種を導入して生産量が拡大したインドネシア
生産量4位にランクインしたのは、60,963tとアジアで2番目の生産量を誇るインドネシアです。
生産量自体は多くないものの、ジャコウネコのフンから作られる世界一高級のコーヒー「コピ・ルアク」が生産されるのもこのインドネシアです。
元々アラビカ種が多い産地であったものの、1860~1880年にかけてサビ病(カビの一種に感染する病気)で衰退してしまった歴史があります。
しかしその後、サビ病に抵抗性を持つロブスタ種の栽培を伸ばすことで生産量4位までにコーヒー産業が回復しました。
現在は90%がロブスタ種になっており、インドネシアのひとつのイメージングにも繋がっています。
No.5コーヒー発祥の地エチオピア
コーヒーの発祥の地といわれている、生産量482,561tのエチオピアが5位です。
アフリカ諸国の中では生産量1位であるものの、全世界の生産量では4位のインドネシアの1.5倍もの差があります。
生産量1位のブラジルなどと比べると差は歴然ですが、大量生産国にはできない自然の力に頼った少量生産というエチオピアならではの魅力があります。
たとえば人が栽培しているコーヒーではなく、自生しているコーヒー「フォレストコーヒー」。
他には農家が他の作物と一緒に育てる「ガーデンコーヒー」などが多く、世界中のコーヒーラバーを魅了する豆を栽培しています。
No.6国を挙げてコーヒー栽培の復興が行われたホンジュラス
生産量6位となったのは、あまり聞き慣れない国名のホンジュラス。中央アメリカの中部にある共和国で、生産量476,345tと中米で第1位となっています。
日本のわずか1/3ほどしか国土面積がなく、山地がほとんどで平地は20%しかない国です。
しかし温暖な気候に火山性土壌、標高の高い産地に適切な日照量など、品質の高いコーヒーを生産する良好な条件が揃っており、近年特に人気が出てきている産地です。
2012年~2013年、深刻なサビ病問題が起こり、ホンジュラスでのコーヒー産業が衰退したものの国を挙げて復興。現在は中米最大の生産国を誇るまでとなりました。
No.7SCAAの品評会で1位を獲得したことがあるペルー
生産量7位となったのは、生産量363,291tのペルーです。ブラジルやコロンビアなど、名だたる有名産地にも隣接するペルー。
南北を横断するアンデス山脈や豊富な水量を誇るアマゾン川など、豊かな自然が広がりコーヒー産業として成功しています。
他にも昼夜の寒暖差が大きく適切な日照量もあるなど、コーヒー栽培にとって好条件が揃っており、高品質なコーヒー豆を生み出しています。
ペルーコーヒーの名を知らしめたのは、2010年に開催された全米スペシャルティコーヒー協会(SCAA)の品評会。
そこでペルーは見事1位を獲得し、以後飛躍的にコーヒー産業が盛んになりました。
No.8品種改良や生産切り替えによりサビ病から復興したインド
生産量8位にランクインしたのは、319,500tの生産量を誇るインドです。
インドは紅茶の生産国であるイメージが強いかもしれません。しかしコーヒー産業の歴史は紅茶よりも古く、常時世界の生産量10位内にランクインしています。
生産量の70%は輸出されているものの、残念ながら日本への輸出は少なく、ヨーロッパメインの流通となっているのが現状です。
サビ病蔓延によるコーヒー産業衰退の時期もありましたが、サビ病に強いアラビカ種にすべく品種改良の実行や、元々サビ病に強いロブスタ種の生産などを行いました。
おかげで今では生産量8位です。日本への流通も少しずつですが伸びており、今後注目していきたい国のひとつですね。
No.9アフリカでは第2位の生産力を誇るウガンダ
なかなか聞き慣れない国かもしれませんが、アフリカ東部の自然豊かな国、ウガンダが生産量254,088tで世界第9位にランクイン。
ロブスタ種発祥の地ともいわれており、アフリカでは第2位の生産量を誇ります。
コーヒー輸出量の80%をロブスタ種が占めているウガンダですが、近年は「ブルーナイル」や「ブギス」などのアラビカ種の人気が高まってきており、高品質で特徴的なコーヒー豆と評価を得ています。
アフリカ東部では珍しく緑豊かな栄養ある大地で、多くの野生動物の住む「アフリカの真珠」と呼ばれるウガンダ。
昼夜の温暖差や標高の高さもあり、高品質のコーヒー栽培に適した環境が整っています。
No.10 ANACAFEを設立し品質と生産管理が向上しているグァテマラ
生産量10位にランクインしたのは中央アメリカ北部に位置する共和制国家、グァテマラ。中米を代表するコーヒー生産国で、225,000tの生産量を誇ります。
太平洋とカリブ海に面した国で、国土の70%は火山に囲まれた特徴的な山岳地帯です。
標高も高く、昼夜の寒暖差、土壌などコーヒー栽培に適した条件が揃っており、高品質なコーヒー豆を輸出しているとして今後も注目の産地です。
1969年には、コーヒーの品質と生産の向上を目的とした専門機関「グァテマラ全国コーヒー協会・通称ANACAFE(アナカフェ)」が設立され、グァテマラの認知も広まりました。
コーヒーの輸出先としては、アメリカやカナダに次いで日本が第3位となっており、グァテマラの力強い酸味と甘くて芳醇な香りが日本国内でも人気となっています。
日本コーヒー輸入量の約70%がブラジル、ベトナム、コロンビアの3ヶ国
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インスタントコーヒーが広まり気軽にコーヒーが楽しめるようになったこともあり、日本は自国のお茶同様にコーヒーを愛飲するコーヒー消費国となりました。
日本は世界47カ国からコーヒーを輸入していますが、国内の輸入量TOP3は生産量の多い国と同様。
ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位3か国で輸入量の約70%を占めています。(2021年の財務省の調べ)
一方、世界生産量10位のグァテマラが日本輸入量では5位であり、日本国内での人気が見て取れます。
酸味がしっかりとしていて甘みと芳醇な香りをもつグァテマラのコーヒーは、日本人の口にも合いやすく、今後もっと輸入量が上昇する可能性がある産地となっています。
日本は2021年のコーヒー輸入量が世界第3位
世界のコーヒー輸入量を見てみると、EU、アメリカに次いで日本が第3位となっており、世界的に見ても消費量が多いコーヒー消費大国です。
EUでもっとも輸入量が多いのはドイツで、『1位アメリカ、2位ドイツ、3位日本』というのが、代表的なコーヒー輸入国。
また2021年のコーヒー輸入量は約45万トンとなっており、日本人にとってコーヒーは、食生活に切っても切り離せない飲み物といえます。
2017~2018年全世界でのコーヒー消費量
国別でみるとブラジルやEU、アメリカなどが飛びぬけて上位にあがってきます。
しかし、国の大きさはもちろん、人口の多さもかなり違います。
国別消費量が多い国でも人口が多ければ一人あたりの消費量もかなり違ってくるので、次に一人当たりの消費量を見てみましょう。
全世界の一人当たりのコーヒー消費量
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2020年の1人あたりのコーヒー消費量を見てみると、寒い地域やEUなどが多いことがわかります。
ここまでで全体の30%近くを占めており、日本は7位で全体の5%を占める割合です。
コーヒー生産国であるブラジルやエスプレッソ文化のイメージのあるイタリアなどを差し置き、一人当たりの消費量TOPに躍り出たのはルクセンブルク。
なんと、日本の6倍近い消費量を誇っています。
寒い地域ではホットコーヒーが広く好まれ、チョコレートやミルクとの相性が良い、というのも人気の理由になっています。
まとめ
ブラジルやベトナム、コロンビアなど普段親しみのあるコーヒー生産国から、あまり聞いたことのない生産国まで多数出てきました。
特に日本国内で人気が急上昇してきているグァテマラは注目の産地ですね。
日本では、ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位3カ国で70%の輸入量を占めていますが、60カ国もの国からコーヒーを輸入しています。
コーヒーは産地によってまったく味わいが異なるので、ぜひこの機会に他の国のコーヒーをトライしてみてくださいね。
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この記事を書いた人
山下美月
管理栄養士/ソムリエ/フリーライター
管理栄養士&ソムリエの食べ飲み大好きライター。無類のコーヒー好き。食に関するあれやこれを発信中。モットーはよく食べよく飲みよく働くこと。