みなさんは、自宅でコーヒーの木を栽培できることは知っていましたか?
今回はコーヒーの木とはどんなものなのか?自宅での育て方や気を付けるべきポイントなどを解説します。
またコーヒー好きなら知っておきたい知識として、意外と知られていない世界三大原種「アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種」の特徴や原産国なども簡単に解説します。
この記事を書いた人
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。
コーヒーの木(コーヒーノキ)とは?
コーヒーの木とは、アカネ科コフィア属(コーヒーノキ属やコーヒー属とも呼ばれます)に属した常緑樹の総称です。
成長すると白い花を咲かせ、赤い果実が実ります。
このコーヒーの木に実った果実はコーヒーチェリーと呼ばれています。
そしてコーヒーチェリーを精選処理して中の種子を取り出し、焙煎加工したものがコーヒー豆です。
元々コーヒーの種子は白に近い薄緑色をしているのですが、焙煎加工して茶色く変化するのです。
コーヒー豆がどうやってできるのか想像できなかったり、最初から茶色い豆だと思っている人が多いようです。
しかし実はコーヒーの木が存在し、果実の中にある種子を加工したものがコーヒー豆になるのです。
サクランボに似ていることからコーヒーチェリーと呼ばれる
コーヒーの木は、栽培し始めてから3年前後でようやく花をつけます。
白くて可愛らしい花からはジャスミンのような香り。受粉後は数か月で実が大きくなり、色も緑色から赤色に変化します。
熟すとそれは鮮やかできれいな赤色に染まり、形もチェリーに似ていることからコーヒーチェリーと呼ばれています。
コーヒーは苗を植えてすぐに種子を収穫し、焙煎してコーヒーを飲めるようになるわけではありません。
自分で育てたコーヒーを飲みたいなら、気長に待つ必要があります。
コーヒーの木の育て方
コーヒーは暖かい地域で育てられる植物なので、暖かい場所を好みます。
世界でコーヒーの木が栽培されている地域は、赤道を中心にして南緯25度から北緯25度の地域で栽培されていることが多く、これをコーヒーベルトと呼びます。
ですが、四季がある日本でも栽培することは可能。
これからコーヒーの木を上手に成長させるためのポイントを紹介します。
幹が太く葉が多く、色や艶がきれいな株を選ぶ
ひとつ目のポイントは、幹がしっかりとしていて葉が多く、色や艶がきれいな株を選ぶことです。
コーヒーの株は園芸店や雑貨店などで安易に手に入れることができます。
観賞用植物としても人気なので取り扱っているお店も多いですが、中には長期間暗い場所に置かれていることもあります。
あまり日光に当たっていないコーヒーの木は間延びして下葉が落ちていたりして、弱々しくなっているものもあるので注意して見てみましょう。
また一般的にアラビカ種という品種が多く販売されています。
他にもいくつか品種がありますが、日本で圧倒的に出回っているのはアラビカ種です。
種まきは3月~5月、植え付けは5月~9月がベスト
ふたつ目のポイントは、種まきや植え付けを行う時期です。
コーヒーは熱帯性の植物です。コーヒーの木が栽培されているコーヒーベルトは熱帯地域なので、年間平均気温が15~30℃。
そのため、自宅で栽培する場合も暖かい時期に植え付けを行うのがおすすめです。
種まきをするなら冬が終わって暖かくなり始めた3月~5月に、植え付けを行う場合は5月~9月の間の猛暑日を避けた時期に行うと良いでしょう。
また熱帯性の植物とはいえ、コーヒーの木はデリケートなので直射日光に弱いです。
強い日差しに当たり過ぎると枯れてしまう恐れがあるので注意しましょう。
コーヒーの木を育てる環境作り
暑さには強いが寒さには弱いコーヒーの木
コーヒーの生産三大国はブラジル、ベトナム、コロンビアです。
圧倒的な生産量を誇る三国は、全て暖かい気候という共通点があります。
逆に寒い気候には適しておらず、10℃以下になる冬場は暖かい室内に置くようにしましょう。
先ほど解説したように、熱帯性の植物であるコーヒーの木は暖かい気候や日光を好みますが、直射日光を長時間当たると葉焼けを起こして枯れてしまいます。
柔らかいカーテンなどを利用して適度な日光が当たるようにするといいでしょう。
コーヒーの木を育てる場合、日光の当たり方に気を使わなかったり、温度管理を怠ってしまうと急に枯れて回復させることができないこともあるので充分に気を付けましょう。
水はけの良い清潔な腐植質の土壌を用意する
コーヒーの木を育てるなら、通気性があり水はけの良い土壌を作る必要があります。
水はけが悪い土壌で育てるとコバエが発生したり、根腐れを起こしてしまう可能性があるからです。
とはいえそこまで神経質にこだわる必要もなく、栽培するなら市販の観葉植物用の土があれば充分です。
もし自分で他の土を混ぜるのであれば、通気性や保水性のある赤玉土や鹿沼土を少し加えると良いでしょう。
これらの土は菌の繁殖や害虫の発生が少なく、土壌を清潔に保ちやすくなるのでおすすめです。
コーヒーの木のためにはもちろん、季節や環境によっては室内で育てることもあるので、できるだけ清潔な土壌を作りたいですね。
コーヒーの木の育成から収穫まで3つの重要ポイント
コーヒーの木は季節によって水のやり方が違う
コーヒーの木は季節によって水のやり方が違うのはご存知でしょうか?
ついつい毎日水をやってしまいがちですが、毎日水をあげればいいというわけではありません。
春と秋は良く成長するので土の表面が乾いていたら水をたっぷりとあげます。
中まで充分に浸透させるようにして、受け皿に溜まった水は捨てましょう。
夏場は気温が高くなり、表面が乾燥していたら毎日水をあげます。
ですが温度の高い日中に水をやると水が高温になり、根を痛めてしまう恐れがあるので、朝か夕方に水をあげるのがポイントです。
冬になるとそれまで成長していたのが落ち着いて休眠時期に入るので、土全体が乾く4~5日ごとに水をあげます。
暖房をつけて乾燥しやすかったら葉水をしてあげたり、室温まで温めた水をあげるなどの工夫もすると良いです。
注意すべき病気や害虫
コーヒーの木の性質を理解し、上記のようなポイントを押さえておかないと病気になったり害虫が発生します。
特に注意すべきなのは「さび病」。さび病とは葉っぱの裏に斑点状の模様ができるカビの一種であり、感染力が非常に強いです。
大農園でも2~3年でコーヒーの木が全滅してしまうほどの恐ろしさを持っています。
また風通しが悪かったり空気が乾燥していると、カイガラムシの他、新芽の柔らかい部分にはアブラムシが発生しやすくなります。
これらの病気や害虫はコーヒーの木の生育に悪影響を及ぼし、場合によっては元に戻らないので充分に気を付けましょう。
発生を防ぐにはコーヒーの木を乾燥させすぎないことや、適度な日光を当てたり、風通しの良い場所で栽培することが大切です。
コーヒーチェリーを収穫
コーヒーの木は発芽後3~5年で1mを越すぐらいの大きさに成長します。
するとジャスミンのような香りを持った白い花をつけ、花が落ちた後、実をつけます。
つき始めたばかりの実は緑色をしていますが、熟していくにつれて赤色に変化していきます。
完熟の実はコーヒーチェリーと呼ばれるほど美しい赤色をしていて、この中に入っている種を精選加工したものがコーヒー豆になるのです。
コーヒーチェリーを完全に熟したタイミングで収穫したものと、まだ熟していない緑色の状態で収穫したものではコーヒーの味に雲泥の差が生まれます。
もし自宅で栽培して収穫するのであれば、鮮やかな赤色になるのを待ってから収穫しましょう。
コーヒーの木には三大原種「アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種」がある
コーヒーは生産国によって特徴があることを知っている人は多いかもしれませんが、様々な品種があり、品種ごとの特徴を知っている人は少ないかもしれませんね。
今回はコーヒーの木の三大原種と呼ばれている「アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種」について順を追って紹介します。
[関連]コーヒー豆にはどんな品種があるの?産地や育て方の違いを解説します。
アラビカ種とは?
正式名称はコフィア・アラビカと呼ばれており、エチオピアのアビシニア高原が原産地です。
元々は薬用として用いられていましたが、イエメンに移った後、飲用として普及されていきました。
世界でコーヒー豆が生産されている6割弱がこのアラビカ種です。
後で紹介するカネフォラ種やリベリカ種よりも味と香りが優れているため、全世界で飲まれている品種です。
同じアラビカ種でもゲイシャやブルボン、ティピカやカトゥーラなどといった色々な品種に分けることができ、一つひとつ特徴が違ってきます。
酸味があり花のような香りが特徴のアラビカ種
アラビカ種の中でも品種や生産国、精選方法によって風味が変わってくるのですが、大きな特徴は酸味が強く、花のように甘い香りがすることです。
アラビカ種は高温多湿や乾燥した環境に弱い品種のため、標高1,000~2,000mの比較的高い場所で栽培されることが多いです。
またカネフォラ種やリベリカ種よりも病虫害や霜にも弱いので栽培が難しい品種とされています。
実をつけるまでの期間も長く、高地で栽培されていることから収穫にも手間がかかります。
そのため、最近では収穫量が多い物や病虫害に強く、風味が豊かな新しい品種を作り出そうと品種改良が行われています。
アラビカ種のみで作られるスペシャルティコーヒー
スペシャルティコーヒーとは、アラビカ種の中でも上位数%しか選ばれない、豊かなテイストと香りを持ったトップクラスのコーヒー豆のことです。
コーヒーの木の『栽培→生産処理→選別→輸送→焙煎』までの全行程を徹底した管理のもとで行われ、欠点豆の混入率が見られないことも大きな特徴です。
スペシャルティコーヒーを取り扱うコーヒーショップでは、豆の個性をダイレクトに感じてもらうためにブレンドよりもシングルオリジンと言われます。
農場や生産者、生産処理などの単位で一銘柄とされたブレンドされていないコーヒーが提供されることが多いです。
高品質なコーヒーのため通常よりもお値段は高いですが、本当に美味しいコーヒーを味わいたいのであれば一度味わってみる価値はあります。
カネフォラ種(ロブスタ種)とは?
続いてアラビカ種に続く主要なコーヒー生産量を占めているのが、カネフォラ種です。
カネフォラ種はアフリカのコンゴで発見され、今では世界で生産されているコーヒーがアラビカ種に続き4割を占めています。
カネフォラ種で流通しているほとんどの品種がロブスタ種のため、カネフォラ種=ロブスタ種という意味で使われていることも多いです。
主にアジアで生産されていることが多く、特に生産量が世界第3位を誇るベトナムではほとんどがカネフォラ種を生産しています。
アラビカ種よりも安価で大量に収穫ができるため、日本ではインスタントコーヒーに使われることが多いです。
酸味が少なく強い苦味とコクが特徴のカネフォラ種
カネフォラ種の特徴は、麦茶のような香ばしさと、強い苦味です。
風味はアラビカ種に劣りますが、成長が早く、病虫害やコーヒーの木の天敵であるさび病に強い性質を持っています。
また高温多湿の環境にも対応する力があるので低地でも栽培しやすく、標高500m前後の地域で栽培している地域もあります。
そのためコーヒーベルト内の中でも、高温多湿地帯であるアジアやアフリカで好まれて栽培されているということです。
日本ではインスタントコーヒーに使用されることが多いですが、ヨーロッパではエスプレッソにブレンドして使用されることが多いそう。
風味や品質はアラビカ種に劣りますが、安く手に入れやすいことからアラビカ種が主要になった現在でもまだまだ需要はあります。
[関連]ロブスタ種(カネフォラ)コーヒーの人気おすすめランキング
リベリカ種とは?
リベリカ種という品種に馴染みが無い人は多いと思います。
コーヒーの三大原種でありながら、生産量は1割も満たないとても貴重な品種です。
アフリカのリベリア共和国が原産地と言われており、低地や平地栽培が可能です。
また温度変化や雨が少なくてもよく育ち、何よりさび病に強いということでインドネシアを筆頭に東南アジアで普及していきます。
ですが、新種のさび病が出現したことで耐さび病性は不完全だということが分かり、カネフォラ種に代わって徐々に生産量が減少していきました。
リベリカ種のコーヒー豆は大きさにばらつきがあり焙煎しにくく、成長するのに時間がかかります。
収穫量も少ないという難点もあるため、生産国で自家消費され世界にはあまり出回っていません。
強い香りと強い苦味を併せ持つリベリカ種
リベリカ種の特徴は、酸味が圧倒的に少なく、強い苦味と香りを持ち合わせています。
苦味は強いですが、後味を引くような嫌味のある苦さは少なく、ミルクとよく合うコーヒー豆になっています。
現在はフィリピンやマレーシアで栽培されていますが、先ほど解説したように栽培しにくい品種のため日本にはほとんど入ってきていません。
アラビカ種やカネフォラ種と比べても風味が劣ってしまいますが、機会があればぜひ飲んでみたいものですね。
[関連]リベリカ種とは?特徴や主要産地とコーヒー3大原種について
まとめ
今回はコーヒーの木の育て方から世界三大品種について幅広く解説しました。
コーヒーの木の性質をよく理解すれば自宅でも育てられ、観賞用として楽しめる他、数年後にはコーヒーチェリーも収穫できるようになります。
コーヒー豆ができる過程を知れば、コーヒーショップで豆を選ぶのも楽しくなるはず。
ぜひコーヒーの木を育ててみませんか?
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この記事を書いた人
小野 青
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。